はじめに:医療費ってそんなに多いの?
「医療費が国家予算のかなりを占めている」とはよく聞きますが、具体的にどれくらいかご存知でしょうか?
実は、日本の一般会計において「社会保障関係費」が最大の支出項目となっており、その中でも「医療費」は非常に大きな割合を占めています。
この記事では、以下のポイントを明らかにします。
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医療費の実際の割合
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他の歳出との比較
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欧米との医療文化の違い
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将来を見据えた制度改革の可能性
社会保障費における医療費の位置づけ
2025年度(令和7年度)の国家予算ベースで見てみましょう。
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一般会計総額:約115兆円
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社会保障関係費:約38.3兆円(全体の約33.2%)
その社会保障関係費の内訳は以下の通りです:
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年金:約40.5%
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医療:約35.4%
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福祉その他:約24.2%
つまり、単純計算で医療費は国家予算全体の「約11.8兆円」程度。年金に次いで、非常に重たい支出です。
他の支出との比較
社会保障費の次に大きいのは以下のような項目です。
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地方交付税交付金等:約18.9兆円(約16.4%)
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防衛関係費:約8.7兆円(約7.5%)
つまり、医療費は防衛費の約4.5倍という規模になります。
欧米との文化的な違い
欧米では、以下のような理由から「病院にあまり行かない」という文化が根付いています。
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予約が取りづらい
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フランスでは風邪程度だと「3日後に来てください」と言われることも。
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ドイツではかかりつけ医を通しての予約が基本。
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医療費が高額
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アメリカなどでは保険があっても自己負担が高いため、軽症では受診を避ける傾向があります。
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薬剤師の活用
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軽い症状なら病院ではなく、まずはドラッグストアの薬剤師に相談するのが一般的。
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カナダやオーストラリアでも薬剤師が適切な市販薬を勧めてくれる仕組みがあります。
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日本の課題:気軽に病院へ行けることの影響
日本は「誰でもすぐに病院に行ける安心感」がある一方で、それが過剰受診や無駄な医療費につながっている可能性も否めません。
たとえば:
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湿布やビタミン剤をもらうためだけの受診
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市販薬で済むはずの風邪での外来
これらが積み重なると、医療資源の分散や、本当に必要な医療へのアクセスを圧迫することにつながります。
予防医療・健康診断の活用がカギ
欧米型の仕組みで注目すべきは、単に「病院に行かない」ことではなく、その代わりに「予防医療」が発達している点です。
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定期健診の徹底
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薬剤師や看護師の役割拡大
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デジタルヘルスやAIによるスクリーニング支援
こうした取り組みによって、結果的に医療費全体を圧縮しつつ、重症化を防ぐ体制を構築しています。
医療制度は変えられるのか?
医師会の存在や国民の意識、制度の複雑さなど、改革を阻む要因は多いのは事実です。しかし、次のような視点を持つことで、制度の見直しは不可能ではありません。
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本当に必要な医療への資源集中
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軽症・慢性疾患の自己管理支援
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医療以外の社会的コスト(例えば介護や精神疾患)とのバランス調整
おわりに:これからの医療をどう考えるか
「安心して医療が受けられる社会」はもちろん必要です。しかし、過剰に頼りすぎると制度が持たなくなります。
日本が目指すべきは、「本当に必要な医療を、必要な人に、必要なタイミングで届ける」こと。そのためには、予防・分散・効率化の3点を軸に、医療の在り方を再構築していくことが求められます。
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