はじめに:なぜインド人は「信用できない」と思われがちなのか?
「インド人は嘘をつく」
ビジネスやITの現場で、こんな声を一度は聞いたことがあるかもしれません。実際に「できると言ったのに、後になってできないと言われた」「納期を守らない」「言うことがコロコロ変わる」と感じた経験から、そうした印象を持った人も多いでしょう。
しかし、それは本当に“嘘”なのでしょうか?
この記事では、「インド人=嘘つき」というレッテルがどこから来たのか、そしてそれが単なる文化的誤解に過ぎないことを解き明かしていきます。
「嘘」と「柔軟さ」は紙一重:インド人の"Yes"の真意
日本人が「嘘」と感じてしまう最大のポイントは、インド人がよく口にする「Yes」や「できます」のニュアンスです。
インドの文化では、まず「できる」と言って前向きな姿勢を見せることが大切とされています。なぜなら、チャンスを逃さないため、相手に良い印象を与えるため、そして関係性を円滑に進めるためです。これは「嘘」ではなく、「ポジティブな可能性を示している」と言ったほうが正確でしょう。
一方、日本人は「できる」と言えば「責任をもって完遂する」ことを前提にしているため、「やっぱりできなかった」となると、裏切られたように感じてしまうのです。
調和と対話の文化:インド的“空気の読み方”
インドでは“その場の調和”をとても大切にします。日本のように「空気を読む文化」がある一方、インドの場合は「場の対話を気持ちよく進めること」が重視されます。その結果、相手に合わせて少し話を盛る、断言を避ける、柔軟に答えを変える、といった対応が一般的になるのです。
これが日本人の目には「一貫性がない」「信頼できない」と映るのは無理もありません。
時間感覚の違い:「守らない」のか「緩やか」なのか
納期や予定についても、「時間の厳守」が絶対的価値観である日本人にとっては、インド人の“ゆるやかな時間感覚”は大きなストレス源です。
ただし、これも「無責任だから」「嘘をついているから」ではなく、時間に対する捉え方そのものが違うから。インドでは「状況に応じて柔軟に動くこと」が尊重される傾向があり、それが予定変更や曖昧なスケジューリングにつながっているのです。
背景にある宗教・哲学的価値観
ヒンドゥー文化には、運命やカルマ、流れの中で最善を尽くすという思想があります。「今この瞬間にベストを尽くすこと」が優先されるため、未来のことを断言するのが難しい、あるいは避けるという傾向もあるのです。
「できる」と言ったときの“できる”は、「その瞬間の最善の努力を約束する」という意味合いを持つことすらあります。
日本人が“誤解しやすい”4つのポイント
以下が、特に誤解の温床となる文化差です:
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前向きな“できる”が誤解を生む:実現可能性よりも関係性を優先する。
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場の調和重視で意見が変わる:相手を否定しない=柔軟に同意する姿勢。
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時間は守るより調整するもの:変更は悪ではなく「最適化」。
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未来は“断言しない”ほうが誠実:ヒンドゥー的世界観の影響。
まとめ:「嘘」ではなく「価値観の違い」
結論から言えば、「インド人は嘘をつく」というのは日本人的な価値観を基準にした場合の誤解にすぎません。彼らの多くは、むしろ誠実であり、前向きで、柔軟であろうとしています。ただ、その「誠実さ」の表現方法が日本と違うだけなのです。
だからこそ、我々が「嘘だ」と決めつける前に、その背景にある文化・価値観の違いを知ることが、より良い国際的コミュニケーションの第一歩になるはずです。
最後に:視点を変えるだけで世界は変わる
もしあなたが「インド人は嘘つきだ」と感じた経験があるなら、その時の会話や状況を思い出してみてください。それは本当に「騙された」のでしょうか?それとも、文化の違いを見誤っただけかもしれません。
誤解は視点から生まれ、理解は視点の切り替えから始まります。
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